アラブ圏にみる世界遺産

悪魔から身を守るファティマの手

モロッコの世界遺産の特徴はメディナ(旧市街)全体が、ユネスコに登録されていること。つまり、歴史も含めて、現在そこに生活している人たちの営み全てが世界遺産というわけです。

ですから、世界遺産巡りの旅でモロッコを訪れたのなら、ぜひ自分の足で街をくまなく歩いてみてください。
散歩をするようにあてどもなく歩くのも楽しいものですが、何かをチェックしながら歩くと、より有意義に過ごせるでしょう。たとえば、歴史のありそうな家をみつけたら、そのドアに注目してみるとか。そこには手のひらを模したドアノッカー(ドアをたたくもの)が取り付けられていることに気づくはずです。
特に世界遺産の街「フェズ」や「古都メクネス」などに見られます。
これは悪魔から身を守るお守りの一種で「ファティマの手」と呼ばれているものです。
ドアノッカーの他にも、ペンダントや指輪、鏡、陶器にも描かれており、イスラム圏のあちらこちらで見られます。
見るからに「手」そのもののデザインから、親指と小指の長さが同じ「くまで」のようなデザインのものまであります。中には左右対称の凝ったデザインもあり、その形は多様です。

また5本の指は、イスラム教で神聖とされている数字「5」であることも象徴されています。
「ファティマ」というのは、予言者ムハンマドの4女、4代目カリフ(初期イスラム国家の最高権威者。アラビア語の「継承者」のこと)の妻となった女性の名です。26歳で亡くなったこの女性は、いつも貧しい人たちを気にかけ、率先して病人の手当てなどに努めたそうです。
ムスリムにとって理想の女性であるファティマ。慈悲深い救いの手が差し伸べられることを信じて、彼女の手をかたどったものをもつようになったそうです。

モロッコを訪れた際には、「ファティマ」の手をかたどった品をお土産に選ぶとよいかもしれませんね。きっとお守りとなってくれることでしょう。